<2021年8月15日>平和統一主日「真の平和のために」鄭元然牧師

大阪教会主日礼拝 <2021年8月15>五旬節後第12主日/平和統一主日                      

* 題目 : 真の平和のために 

* 聖書 :  예레미야 6장 13절-14절 エレミヤ書6章:13-14  

[/新共同訳]

13. 「身分の低い者から高い者に至るまで/皆、利をむさぼり/預言者から祭司に至るまで皆、欺く。14.彼らは、わが民の破滅を手軽に治療して/平和がないのに、『平和、平和』と言う。

<説教>

映像礼拝をささげておられる信徒のみなさん、礼拝堂で参加されている信徒のみなさんに主の平和が降り注ぐことを祈願いたします。「シャローム!」。新型コロナウイルス感染の状況は益々深刻になってきています。世界中に新感染者数が増加し続けています。今年の初め、一日の死者数は平均1万8千人でした。少し減少してきて、最近再び1万超えとなり、増え続けています。

日本政府の発表によると、土曜日の時点で新たな患者が1日当たり2万人を超えました。さらに今後を予測できないことが不安を煽っています。先週は、欧州とドイツ地域が暴雨で大きな被害に遭ったとのニュースが聞こえてきましたが、今回は日本の南に位置する九州地域に大雨が降ったそうです。なんと数日間降った雨の量が、大韓民国の一年間の降水量に匹敵するそうです。今も降っているので、多くの被害が予想されます。地域住民の安全を祈ります。

2000年9月11日、米ニューヨークで起きたテロ事件は翌年2001年に米国が中心になり、イスラム過激主義の武装団体である「アルカイダ」と「タリバン」の拠点地域であるアフガニスタン攻撃を開始し、戦争が勃発してから20年が経ちました。ところが最近、米国が撤退することになり再びタリバン勢力が12都市を占領したとの戦争のニュースが伝わってきました。また血なまぐさい戦争が予告されています。ミャンマーでは軍人による軍事クーデターが起こり、民主主義を守ろうとする善良な市民を無差別に殺しているとの恐ろしいニュースを聞きます。

自然災害、伝染病、戦争と宗教の優越などは、平和を壊す要素です。今日は、在日大韓基督教会が定めた祖国平和統一主日です。日本に住んでいる私たちだけではありません。2013年の世界教会協議会釜山総会で、全世界の教会は8月15日が含まれる週を「韓半島の平和統一共同祈祷週間」にすることを決意しました。今日は、全世界の教会が韓半島のために祈る意味ある主日です。分断された韓半島に平和を基にした統一がくる日を待ち望みながら神に祈ります。私たちクリスチャンができること、平和の実現のために定めた意味ある主日です。

 

聖書の歴史と世のことを見ると、エデンの園の後、この地には真の平和が存在したことがないようです。神様に従わなかったアダムとエバは、善悪がわかる木の実を食べることにより、「罪」を犯しました。彼の息子であるカインとアベルは兄弟を殺す殺人という罪を犯します。平和の状態が壊れたのです。神様が人を造られたことを後悔するほどの罪が満ちた世界となり、洪水で審判しました。洪水が終わり、ある程度の時間が過ぎた後、人間は再び神のよう高くなりたいと思い、天に上ろうとバベルの塔を築きあげました。神様はその塔を崩すのと同時に、人間の言語で混乱が生じる世界にさせました。言語の混乱は、人々のコミュニケーションを円満にさせないだけでなく、戦う原因になりました。聖書の最後、新約のヨハネの黙示録まで戦争の内容が続いています。世界の国々の戦争と天国とサタンとの戦争も出てきています。

神様は戦いを好む方なのでしょうか。そうではありません!神様は「愛と平和の神」と記されています。(二コリ13:11)神様と人の間にこの平和が実現され、平和な世界になることを望んでおられます。今日の礼拝の招(しょう)詞(し)を聞きました。「あなたが祭壇に供え物をささげようとし、兄弟が自分に反感を持っているのをそこで思い出したなら、その供え物を祭壇の前に置き、まず行って兄弟と仲直りをし、それから帰って来て供え物をささげなさい。」とのみことばです。

「平和」という言葉は(ヘブライ語)「シャローム」、(ギリシャ語)「エイレネ」、(韓国語)「安寧(アンニョン)」と表現します。最初に思いつくのは、戦争や葛藤のない穏やかで平穏な状況です。足りないものがない完全な状態、分裂がない一つ、バランスが取れて調和された状態、体が健やかで健康な状態、生活が繁栄して満ちている状態を指します。すべての人々は、このような心や社会になることを望んでいます。ところが、実際の私たちの生活には、このような「シャローム」があまりにも遠いところにあるようです。なぜ人々が切に望んでいる「平和な世界」になれないのでしょうか。

人間の偽りや傲慢や貪欲が平和をもたらせない原因の一つです。メシヤであるイエス様がこの地に来られ、平和な世界の実現のために話されました。しかし、当時の宗教指導者たちと私利私欲のため偽りを行った人たちによって苦しみを受けられました。それをイエス様が来られる600年前に預言者エレミヤが既に話しました。エレミヤ6章13節 「身分の低い者から高い者に至るまで/皆、利をむさぼり/預言者から祭司に至るまで皆、欺く。14. 彼らは、わが民の破滅を手軽に治療して/平和がないのに、『平和、平和』と言う。」

権力や富への貪欲を持ちと民の痛みを無視しては平和がないのにもかかわらず、口だけ平和であると言う偽りが真の平和を実現することができない原因となっています。利に対する欲が平和を壊す原因だと言えば、簡単に受け入れられないでしょう。しかし、欲がもたらす結果は、平和の実現ができないことです。

イスラエルの歴史の中で信仰的にも政治指導者としても一番邪悪だったひとは、言うまでもなく「アハブ王」です。北イスラエルの7代目の王「アハブ」は、偶像崇拝と貪欲な姿を最も多く見せた邪悪な王でした。バアルを崇拝するイゼベルと政略結婚をし、その影響を受けてイスラエルの各地域にバアルの神殿を建て、バアル崇拝を広めました。(王上16:31)偶像崇拝で主の怒りを招き、イスラエル地には、干ばつや飢饉が襲いました。(王上16:32-33)自分は王として膨大な土地や財産を所有していたのにもかかわらず、ナボトのぶどう畑を欲し、結局妻であるイゼベルの狡猾な手段でナボトを殺してそのブドウ畑を奪いました。エリヤの預言どおりアハブ王の最後は、犬の群れが彼の血をなめる悲惨な死でありました。(王上22:29-38)。

預言者イザヤも当時の政治の指導者たちの政策や行動が真なる平和が実現できない原因だと話しました。イザヤ書59章8節で彼らは平和の道を知らず/その歩む道には裁きがない。彼らは自分の道を曲げ/その道を歩む者はだれも平和を知らない。」と言いました。

平和を知らない人たち、裁きがない社会状況の中で道を作りましたが、曲がった道を歩む民に平和はないと話したのです。「平和を知らない人たちと真なる平和が何かをわからないこと」が問題です。平和の条約や協定を結ぶことで実現できるわけにはいかないのです。

太平洋戦争が終わり、1945年日本は降伏宣言をしました。連合国と日本は、日本国との平和条約(Treaty of San Francisco、Treaty of Peace with Japan、San Francisco Peace Treaty)を結びました。連合国といえば、どれくらいの国数だと思いますか。48カ国と平和協定を結びました。協定の第1章の題目が平和です。1項の内容は(a)日本国と連合国との戦争状態を終了。(b)日本国民と日本国と領海の主権回復です。

2章は(領土放棄または信託統治移管)に関する条項です。1項は、(a)日本は韓国の独立を認め、済州島、巨文島、鬱陵島を含む韓半島とその付属島嶼のすべての権利、資格、領有権を放棄すると記録されています。太平洋戦争が終わり、76年目を迎える今日、この戦争は、本当に終わったのでしょうか。(ヘブライ語)「シャローム」という言葉は、「満足」と「満足を与える」という意味で最も多く使われてています。そして、「補償」と「支払い」という基本的な概念を持っています。

旧約聖書出エジプト記21章35節「ある人の牛が隣人の牛を突いて死なせた場合、生きている方の牛を売って、その代金を折半し、死んだ方の牛も折半する。36. しかし、牛に以前から突く癖のあることが分かっていながら、所有者が注意を怠った場合は、必ず、その牛の代償として牛で償わねばならない。ただし、死んだ牛は彼のものとなる。」

34節には「償い」という言葉が出ます。このように物質的な面でほかの人に被害を負わせたなら、物質的な償いをして解決しなさい、そうすれば平和になると記しています。

偽りの条約を一つ見てみます。モーセの後継者であるヨシュアがカナンの地を占領する過程で神様がカナンの部族を追い出せと命じました。ヨシュア記9章1節「ヨルダン川の西側の山地、シェフェラ、レバノン山のふもとに至る大海の沿岸地方に住むヘト人、アモリ人、カナン人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人の王たちは皆、このことを伝え聞くと、2. 集結してヨシュアの率いるイスラエルと一致して戦おうとした」。しかし、エルサレムの北西側に住んでいた「ギブオン(Gibeon)」人がヨシュアを騙して平和協定を結びました。9章15節「ヨシュアは彼らと和を講じ、命を保障する協定を結び、共同体の指導者たちもその誓いに加わった」。

結局ギブオン人たちは自分が生き延びる為に偽りの平和協定を結びました。その後、ヨシュアが分かり、その理由を聞きました。ギブオン人たちは自分らが生きるためには平和協定を結ぶしかなかったと言います。9章26節「ヨシュアは彼らにそのようにし、イスラエルの人々の手から彼らを助け、殺すことを許さなかった」。指導者ヨシュアはイスラエルの民にギブオン人たちを殺すことを許さなかったと記しています。ヨシュアはこの協定を尊重し、ギブオン人たちと共に生きる決定したのです。

韓半島は太平洋戦争が終わり解放されたが、すぐに国土が分断されてしまいました。韓半島は日本の圧政から解放されましたが、新たな悲劇が始まったのです。76年の年月が流れ、その間に南北は、少し異なる内容ではありますが、「6.15南北共同宣言」と最近の「板門店宣言」、「平壌宣言」など国家の最高指導者の間で約束を結びました。それにもかかわらず、韓半島の平和過程(process)は順調ではありません。

新約聖書で言われる平和は「和睦」すなわち、「戦争がない状態」を指します。さらに、「無秩序と反対の概念」です。信徒の皆さんはイエス様の誕生の日に聞こえてきた天の声を覚えておられるでしょう。ルカによる福音書2章14節「いと高きところには栄光、神にあれ、/地には平和、御心に適う人にあれ」。このみことばは主のみ心に適う生き方をする人たちに平和が臨むことを意味します。

この平和を実現するため、イエス様がこの地に来られました。そして宝のようなみことばを全世界の人々に与えて下さいました。一昨日、黙想時間に共に読んだみことばです。マタイによる福音書5章9節平和を現する人は、幸いである、/その人たちは神の子と呼ばれる。イエス様は平和を実現する人が幸いであると話されました。

民族解放から76周年、祖国分断から76周年、歳月は流れましたが、歴史に残されている宿題があります。胸に残されたままのことがあります。恨(ハン)がある民族の心と分断により生じた葛藤と憎しみを一日も早く解消すべきです。真の平和を実現するために、私たちがしなければならないことをよく考えて実践しなければなりません。8月福音新聞に掲載された日本基督教団所属の飯塚拓也(いいづかたくや)牧師の説教文を読み、恵まれました。 2019年北朝鮮を訪問したときに平壌に同行した日本の牧師です。平壌鳳岫(ボンス)教会で日曜礼拝をささげながら、北朝鮮のクリスチャンの前で「謝罪と和解の文」を準備して読んで下さいました。韓国語の通訳を聞いていた平壌の信徒たちが私たち一行に見せて行動は、私だけでなく、飯塚拓也牧師の心に大きな感動をもたらしたようです。私たちの民族の痛みの象徴である板門店で、一緒に涙を流しながら祈っておられた姿が浮かびました。

「私が嫌って、憎んでいる人のために祈ることができるのか」。これはわたしたちクリスチャンが超えなければならない信仰の山、壁だと言えます。平和の実現は条約を結び、協定を締結することで出来るものではありません。敵のような人のために祈ることです。そして、平和を生み出すために努力することです。主の平和が韓半島と全世界にありますように祈願いたします。シャローム!

<祈祷>

平和を愛し、平和を実現する人は幸いであると話された平和の主である神様、

今日平和統一主日を迎え、礼拝をささげ、みことばを分かち合い、祈祷文で祈りをささげることができ感謝いたします。死の谷が希望の丘に変わるように導いて下さい。私が憎む、嫌っている人々を許し、祝福する

昇華された信仰生活ができるように導いて下さい。私たちに平和を与え、平和を実現していきなさいと話された主イエス・キリストのみ名によってお祈りいたします。アーメン